事件の概要

 高木一行[たかきかずゆき]先生は、2009年に<ヒーリング・ネットワーク>という任意団体を立ち上げられ、これまで講習会やウェブサイトを通じて独自に創始された<ヒーリング・アーツ>という健康法の普及に務めてこられました。
 2011年の東日本大震災以降は、日本人が地震や津波といった自然災害によって深刻なトラウマを抱えてしまっている状況を目の当たりにされ、これを国民レベルでいやす道を模索されていました。
 
 重いPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に役立つ可能性があることから、海外では政府の認可を受けて合法的に研究されている物質にMDMAというものがありますが、Methylone はそれに効果が似ていると言われています。
 高木先生が数年前にMethyloneを海外から輸入された時は合法で問題なく輸入できたため、今回の事件で問題となったMethylone (日本での俗称メチロン)を、知人を通じて輸入を試みたところ、いつの間にかMethyloneが日本で麻薬指定されていたのです。 
 高木先生が個人的に実験された際に、幻覚作用も中毒性といった害が全くなかったことから、まさか麻薬にカテゴライズされているとは認識されていませんでした。

 ヒーリング・ネットワーク・メンバーの有志が研究用のストックとしてMethyloneを購入するというプロジェクトが立ち上がり、事件の共犯者とされるA氏(仮名)はそのプロジェクトに関わって海外のサイトから輸入を行なうことになりました。
 その直後、高木先生のご自宅のリフォームに関してトラブルがあり、高木先生がリフォーム会社から不当に訴えられるという民事訴訟が発生しました。
 その時点でヒーリング・ネットワークでは、いくつかの異なるプロジェクトが同時進行していましたが、訴訟が始まったことでいったん全てのプロジェクトが無期限で凍結されることになります。
 当然、メチロンを購入してストックするというプロジェクトも凍結され、高木先生ご自身はその件はそれで終了したと認識されていました。
 すでにメチロンの輸入手続きをしていたA氏は、キャンセルすべきか分からず、判断をあおぐメールを高木先生に送ったものの、民事訴訟の準備でご多忙だった高木先生が、A氏からのメールを確認していなかったなどの行き違いがありました。迷ったあげくA氏は、個人の判断でメチロンの輸入をキャンセルしないまま受け取ってしまいます。
 A氏は荷物を受け取った時に税関で開封された形跡があることに気づきましたが、開けられて確認した上で届いているのだから特に問題はなかったのだろうと、そのまま自宅にメチロンを保管していました。
 それから数日経って、A氏の家に家宅捜索が入り、逮捕・起訴されることとなります。
 家宅捜索直後、高木先生はA氏から電話で直接相談を受けたのですが、プロジェクト凍結後に連絡の行き違いからA氏が個人の判断で輸入を続行したことで逮捕されてしまったことに責任を感じられ、取り調べでは高木先生から言われて輸入したと答えて構わない、と伝えていました。
 ところが、以後はA氏の家族や担当弁護士に阻まれ、A氏と連絡が取れなくなり、取り調べから裁判が終わるまで高木先生のところには全く情報が入らない状態になってしまいます。
 刑事裁判の経験がないA氏本人はともかく、担当弁護士が刑事事件に不慣れであったことが事態を悪化させました。
 A氏は取り調べでは終始一貫してメチロンが麻薬だと認識してはいなかったと述べていました。
 当時、A氏自身は知らなかったことですが、それまでにメチロンの所持で起きた裁判では、メチロンが違法なものであるとは知らなかったという理由で無罪となっており、その判例に従えばA氏も無罪ということになります。
 にも関わらず、裁判が始まってからの検察の主張では「自白によって罪を認めた」と供述のすり替えが行なわれました(その自白内容が載っているという調書は証拠として提出されていない)。
 素直に認めたほうが罪が軽くなると勝手に判断したと思われる担当弁護士の指示によって、認めるとかえって罪が重くなる不利な内容の検察の主張を、A氏はわけも分からず全部認めさせられてしまったのです。
「高木先生がA氏をそそのかし、違法な薬物と知りながらメチロンを輸入した」という内容でA氏の実刑判決(懲役2年。控訴して1年8ヶ月に減刑)が下ってしまいました。
 主犯として犯罪行為を行なったという状況を完全にでっち上げられて固められてしまった上で、高木先生のご自宅にも警察の家宅捜索が入り、事実と異なる内容によって2013年9月、高木先生も逮捕されてしまったのです。
 そして、2年半にも及ぶ裁判の後、高木先生に実刑4年半(執行猶予なし)という、あまりにも重すぎる不当な判決が言い渡されたのです。