刑務所より愛を込めて No.9


文/高木一行
〜2016年7月10日〜


愛する美佳

 7月4日に山口刑務所へ移送されて以来、あわただしい日々を過ごしている。これまでとは生活の内容もリズムもガラリと変わり、新しく覚えねばならないことが山積みだ。しかも、今後は例えば入浴中にカミソリを当てる位置が目の上に来ただけで懲罰になるとのこと。常に気を引き締め、油断せず生活してゆかねばならない。
 軍隊のような動作訓練もあるのだが、1、2、1、2・・・と全員で足並みを揃えて行進することが私だけうまくできない。2拍子で歩く癖を解体して0拍子を第2の天性へと換える訓練を積んできたことが、思いがけず(そして文字通り)足を引っ張ったわけだ。
 幸い、同室者の中に自衛隊の元教官がいて、居室内で徹底的に練修したので翌日以降は問題なく行進できるようになったが、この一事からわかるように、刑務所というのは平板な二元論の世界なのだ。二元対立を統合止揚する龍宮道の身体運用原理とか思考法、発想法は、ここではことごとく懲罰の対象となる。自発性も要らない。軍隊のような他律性への委ねが厳格に求められる世界にあって、私は我(が)を殺すことをひたすら心がけている。こうした暮らしを何年も継続するうち、非本質的なものはすべてそぎ落とされて真に価値あるものだけが残るだろう。これは1つの新しく生まれ出た道の真価が問われる最終試練に他ならない。
 うまくできなければ大声で怒鳴りつけられ、家畜のように追い立てられ、限界まで声を出すことが求められる。・・・のだが、チャレンジと受け止めればそれも楽しめる。充実感もある。
「外」にいる者たちには、私とは別種の苦労と苦悩があるだろう。今のところボールペンの使用も制限があるため、今後しばらくの間は、これまでのように頻繁に手紙を出してアドバイスすることもできない。
 だから今は、お互いに「自ら立つ」ことをテーマとして、互いへの愛と祈りを糧に、それぞれの世界を新たに切り拓くことに意を注ごう。近い将来、その2つの世界を融け合わせてさらなる新世界を創造するために。
 今は、刑務所という新しい環境に順応することを最優先としたいので、面会も今しばらく我慢しよう。面会中に何か大切なことを聴き逃したりしたら大変だからね。山口刑務所の面会時間は1度に30分とのこと。
 現在、2週間の訓練期間中だが、これが終わると今後の刑務内容が個別に決められ、それに従って居室も引っ越す。変化に次ぐ変化、更生とは・・・日に新たにしてまた日に新たなること。
 落ち着いたら、また改めて連絡する。

2016.07.10       
愛を込めて
一行