『WAR ON DRUGS(薬物戦争)』

REPORT OF THE GLOBAL COMMISSION ON DRUG POLICY(薬物政策国際委員会によるリポート)


 

 本資料は、「麻薬に関する単一条約」に端を発する薬物戦争が失敗に終わったことを宣言し、麻薬政策の抜本的見直しを批准国に求めている。国際的なドラッグ情勢が大きく変化しつつあることを示すものです。

「WAR ON DRUGS(薬物戦争)」 REPORT OF THE GLOBAL COMMISSION ON DRUG POLICY(薬物政策国際委員会によるリポート)」

 作成者  THE GLOBAL COMMISSION ON DRUG POLICY(薬物政策国際委員会)
 作成日  2011年6月

 

 要旨和訳

「麻薬に関する単一条約」は、世界規模における麻薬の乱用を防ぎ、「人類の健康と福祉」を守るための国際条約として、1961年に採択された。
 しかし、公布から50年が経過した2011年、Global Commission on Drug Policy(薬物政策国際委員会)は、「麻薬に関する単一条約」に始まる薬物戦争が失敗に終わったことを宣言した。

「『WAR ON DRUGS(薬物戦争)』REPORT OF THE GLOBAL COMMISSION ON DRUG POLICY(薬物政策国際委員会によるリポート)」は、同委員会が上記の敗北宣言を結論づけた根拠をまとめたリポートである。
 委員会の「COMMISSIONERS(委員)」には、「元国連人権高等弁務官」、「国連難民高等弁務官」「コロンビア・メキシコ・ブラジルの元大統領」「ギリシャの元首相」などの各国の元首や、「作家」、「世界貿易センター記念財団理事」など、各界の有力者が名を連ねている。

「INTRODUCTION(はじめに)」(4ページ)に掲載された、国連による「世界のドラッグ推定消費量(1998年、2008年)」によると、「アヘン・コカイン・大麻」のいずれも、この10年間で増加の一途を辿っている。中でも、アヘンとコカインについては、3割近くも消費量が増大していることがわかる、とある。

 また、厳しい薬物規制が HIVの流行に拍車をかけている、とリポートは指摘する。中でも、東欧、中央アジアなどHIVが急激に広がりつつある地域では、薬物注射による感染が主な感染ルートになりつつある。
「IMPACT OF DRUG POLICIES ON RECENT HIV PREVALENCE AMONG PEOPLE WHO INJECT DRUGS(薬物注射がHIV感染率に及ぼす薬物政策の影響)」(6ページ)によれば、ハームリダクションを積極的に取り入れている国に比べると、導入が進んでいない国における薬物注射によるHIV感染率は、10倍近い増加の傾向が見られた。
 ハームリダクションとは、薬物の取締りよりも、人体の安全を守ることに主眼をおいた薬物対策のあり方を指す。酒好きが高じてアルコール依存やその他の病気を発症した時、その人を刑務所に送るのではなく、病院で治療を受けさせることこそ妥当、という合理的な考え方である。

 リポートはさらに続ける。「PATIENTS NOT CRIMINALS(薬物患者は犯罪者ではない): A MORE HUMANE AND EFFECTIVE APPROACH(より人間的で有効なアプローチ)」(7ページ)には、薬物患者を「犯罪者」として扱うのではなく、より「人間的で有効なアプローチ」で薬物依存患者を減少させることに成功した国として、スイス・イギリス・オランダの事例を挙げている。
 さらに、ヘロイン中毒患者にヘロインを処方するプログラムを実施しているスイスや、メタドンを処方するオランダなどの取組は、依存症患者の減少や、犯罪率の低下に大きな成果を上げていると述べている。

 その他、厳しい薬物規制が巨大な犯罪闇市場に巨利をもたらし、大きく成長させることにつながることについても言及している。
「DECRIMINALIZATION INITIATIVES DO NOT RESULT IN SIGINIFICANT INCREASES IN DRUG USE(非犯罪化への取組は、薬物使用の増大にはつながらない)」(10ページ)には、ポルトガルの事例と、オランダとアメリカの都市の比較を例にとって説明している。

 ポルトガルは、それまで違法とされてきたすべての薬物を非犯罪化することで、ドラッグによる疾患が減った他、ドラッグそのものの使用も減少した。
 アムステルダムと、ロサンゼルスを比較した結果、大麻を非犯罪化することで、使用量が増大することもなければ、規制することで使用量を減少させることにもつながらなかったと指摘している。

 以上のことから、「薬物戦争」というアプローチでは、薬物乱用を防ぐことはおろか、当初の目的であった「人類の健康と福祉」すら守ることができないことがわかる。
「麻薬に関する単一条約」は、2016年に行なわれる「SPECIAL SESSION of the United Nations General Assembly on the World Drug Problem(国連特別総会)」において、改正に着手される予定である。
 現行の「大麻取締法」は、「麻薬に関する単一条約」等の国際条約を法的根拠としているため、上記のような運びとなれば、早晩、改正せざるを得なくなるであろう。現在の、大麻所持に対して厳しい刑罰で臨むやり方は、国際的な観点に照らしてみても、旧時代的なスタンスとなりつつあることを自覚する必要がある。
 本リポートは、世界における薬物政策の動向を端的に示している。