ドブリン博士らの意見書

〜舩田報告の実験データからメチロンの効果を推測することには無理がある〜

 高木一行氏の裁判のためにRick Doblin博士らが記した意見書です。舩田報告書の実験データからメチロンの効果を推測することには無理があることを指摘しています。

Rick Doblin博士

 Rick Doblin博士は、Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)の創設者兼専務取締役です。
 ハーヴァードのケネディ行政大学院から公共政策の博士号を得ており、この大学院で、サイケデリックス(幻覚剤)と大麻の医学的使用に関する法規についての論文、および癌患者の嘔気抑制における喫煙大麻対経口THC(テトラヒドロカンナビノール)錠剤に関する腫瘍学者の調査での修士論文を著わしています。
 フロリダのニュー・カレッジで著わした学位論文は、サイケデリックスが宗教的体験を引き起こす可能性を調べた有名なグッ ド・フライデー試験の、25年の追跡調査でした。彼は、ティモシー・リアリーのコンコード刑務所試験の34年追跡調査も実施しています。
 Rick Doblin博士はスタニスラフ・グロフ博士とともに研究し、ホロトロピック・ブレスワーク実践医として公認された最初の人物の一人です。
 彼の専門家としての目標は、主に処方薬として、また精神療法をもとめること以外では健康な人々の個人的成長のためとしても、サイケデリックスと大麻が有効利用できるよう法的環境の整備に助力することであり、そして最終的には法的許可を得た幻覚治療専門家となることです。

 

<英文>

MDMA RISK ASSESMENT by Ilsa Jerome, Ph.D. and Rick Doblin, Ph.D. June 2, 2015

It is inappropriate to assume that in vitro or in vivo studies using high concentrations of MDMA are an accurate means of estimating effects in humans. The pharmacological profile of a drug may change with concentration, with the drug affecting a greater number of neurotransmitters or receptors as the dose increases. Binding studies (such as Setola et al. 2003 or Simmler et al. 2011) describe a drug’s ability to activate or interact with a transporter or receptor at a specific dose, with some receptors requiring a higher concentration of drug than others. Hence a high dose of drug may not produce the same effects as a lower dose.

In vitro studies are unable to address processes occurring in a living organism, including feedback or feedforward processes that might be directly tied to the drug’s effect on a seemingly “isolated” area.

The effects of MDMA in humans cannot be predicted from what happens after administering a high dose to rodents or nonhuman primates because higher doses of MDMA produce greater plasma concentrations than predicted by dose alone; this is what is called nonlinear pharmacokinetics. Currently there is data on average plasma MDMA and metabolite concentrations in humans, monkeys and rats. These studies indicate that doses at or above 5 mg/kg produce greater plasma values than seen after 150 mg MDMA in humans.

Pharmacokinetics can only be computed with a repeated assessment of drug concentrations in the blood, and none of this work has been done for methylone in humans. Though it might appear that we could easily estimate those concentrations from in vitro or in vivo studies in other animals, the possibility of nonlinear pharmacology remains. This also means it is not appropriate to estimate the effects of methylone through the use of research on MDMA. Methylone is based around a different structure; it is a cathinone, not a phenethylamine.
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L. (Ilsa) Jerome PhD is the clinical research and information specialist for MAPS Public Benefit Corporation, a wholly-owned subsidiary of MAPS, and Rick Doblin PhD is the executive director of MAPS. Jerome has a doctorate in psychology and has followed psychopharmacology and social neuroscience literature.
Doblin has a doctorate in public policy and has written extensively on the evolution of drug regulation within the US Food and Drug Administration in relation to cannabis and psychedelic compounds.
They have gained extensive knowledge of the narrative and scientific literature as a result of developing research studies with MDMA in humans. They have consulted with pharmacologists in the US and Europe to prepare documentation for the safety and efficacy of MDMA.

 

<和訳文>

 MDMAのリスク評価
 Ilsa Jerome, Ph.D.およびRick Doblin, Ph.D.
 2015年6月2日

 ヒトでのMDMAの有効性を推測するうえで、in vitro(試験管内での)実験またはin vivo(前臨床試験としての動物を対象とする)実験に高濃度のMDMAを用いることが必ずしも適正な手段となるとはいえない。薬剤の薬理学的プロフィールは濃度に伴って変化し、その投与量が増えると神経伝達物質や受容体の影響を受けることになる。結合に関する研究 (Setola et al.2003またはSimmler et al.2011など)によれば、投与された薬剤は神経伝達物質や受容体によって活性化され、あるいはそうした物質と相互作用を受けることがわかっている。その場合、受容体のなかには他の物質よりもさらに高い薬剤濃度を必要とするものが存在する。このため、高用量を投与した場合には、低用量を用いた場合と同じような効果が得られない可能性がある。

in vitro実験では、生命体で生じるプロセス、たとえばフィードバックまたはフィードフォーワードプロセスなどに対処することは事実上不可能である。こうした生体内プロセスは、表面上「隔離された」領域においてこの薬剤が有する効果と直接的に結合すると考えられる。

 ヒトでのMDMAの効果に関しては、げっ歯類やヒト以外の霊長類に高用量を投与し、その後に認められる状態からそれを予測することはできない。なぜなら、高用量のMDMAを投与すると、用量のみ予測されるレベル以上に血漿中濃度が上昇するからである。現在、ヒト、サルおよびラットにおいて、MDMAと代謝産物の平均血漿中濃度に関するデータが報告されている。こうした研究データよれば、わずかに5 mg/kg以上のMDMAを投与しただけで、ヒトにMDMAを150mg投与した場合よりも血漿中濃度が高くなることがわかっている。

 薬物動態の評価には、薬剤の血中濃度を繰り返し測定が必要となるが、メチロン(methylone)に関しては未だに薬物動態が評価されていない。こうした薬剤の血中濃度は、ヒト以外の動物を用いたin vitroまたはin vivo実験で測定した濃度データから容易に推測できるように思える。しかし、その薬理作用は非線形に示される可能性がある。このことが意味するのは、MDMAを用いた実験データからメチロンの効果を推測することには無理があるということである。なお、メチロンは異なる化学構造を基にしており、フェネチルアミンというより、カチノンの組成に近い。
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  • (Ilsa) Jerome PhDは、MAPSの完全子会社であるMAPS Public Benefit Corporationの臨床研究情報スペシャリスト(clinical research and information specialist)。Rick Doblin PhDは、MAPSエグゼクティブディレクター。Jeromeは、心理学博士号を取得し、精神薬理学および社会神経科学の研究に携わる。Doblinは公共政策学の博士号を取得。米国FDAでの大麻および幻覚剤に関連する薬剤規制の促進に関して多数の著作がある。 両報告者とも、ヒトでのMDMA研究の進展に関連する論説・科学文献について幅広い知識を有している。このほか、MDMAの安全性および有効性に関する報告書作成を目的として米国および欧州の薬理学者と相互に協議を図っている。

 翻訳者 帆足茂久(医学博士)