不適切な量を用いた舩田氏のMDMA実験

 本資料は、メチロン(高木一行氏の裁判で問題となっている化学物質)と類似しているとされていた(現在では異なる系列の物質であると判明)MDMAにおいて、人の研究を推定するための適切な動物への投与量について報告しています。わが国でメチロン麻薬指定の自然科学的根拠とされた舩田正彦氏の実験報告において使用されたMDMAの用量が科学的にみて不適切なものであったことを示しています。

Baumann, M. H., et al., Effects of dose and route of administration on pharmacokinetics of (+ or -)-3,4-methylendioxymethamphetamine in the rat. Drug Metab Dispos. Nov 2009;37(11):2163-2170(世界で最も多く参照され、権威あるものとみなされている医学文献検索サイトPubmedによる)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19679675

作成者  Baumann, M. H.(アメリカの国立薬物乱用研究所所属)その他

Baumann M.H.について

 Baumann M.H.は、ノラ・ボルコフと同じアメリカの国立薬物乱用研究所所属。1991年、ラトガーズ大学で生理学および神経生物学の博士号を取得。学位論文の研究テーマは、下垂体ホルモンの分泌制御における内因性オピオイドペプチドの関与でした。同年、リチャード・B・ロースマン博士の研究室の研究部員として、NIDA IRP(国立薬物乱用研究所所内研究プログラム)に加わりました。1991~2011年、各種の治療用覚醒剤および乱用覚醒剤の作用機序において、脳ドーパミンおよびセロトニンが果たす重要な役割を、同僚とともに解明。ロースマン博士のもとで働く間に、上級研究部員、研究生物学者に昇格し、現在の地位は幹部科学研究者。
 2012年、 ニューマン博士の研究室に加わり、合成麻薬研究部門(DDRU)を設立。DDRUの主要な目的は、新しく出現する乱用合成薬物(すなわち合成麻薬、日本でいわゆる「危険ドラッグ」)の薬理作用と毒性に関する現行情報の収集、分析、普及です。麻薬取締局(DEA)や地域疫学作業グループ(CEWG)といった協力組織とともに取り組んでおり、合成麻薬の使用について最近の動向を熟知しています。 (http://irp.drugabuse.gov/medchem/Baumann.php より一部引用和訳)

<英文>

Effects of dose and route of administration on pharmacokinetics of (+ or -)-3,4-methylenedioxymethamphetamine in the rat.

Abstract

Based on animal data, there is speculation that (+ or -)-3,4-methylenedioxymethamphetamine (MDMA) is neurotoxic to humans. Extrapolation of MDMA findings from animals to humans requires assessment of pharmacokinetics in various species, and low-dose administration data from rats are lacking. In this study, we examine MDMA pharmacokinetics in rats given low (2 mg/kg) and high (10 mg/kg) doses of racemic MDMA via intraperitoneal, subcutaneous, and oral routes. Repeated blood specimens were collected from venous catheters, and plasma was assayed for MDMA and its metabolites, 4-hydroxy-3-methoxymethamphetamine (HMMA) and 3,4-methylenedioxyamphetamine (MDA), by gas chromatography-mass spectrometry.
After 2 mg/kg, maximum MDMA concentrations (C(max)) were approximately 200 ng/ml for intraperitoneal and subcutaneous routes, but less for the oral route. MDMA plasma half-lives were 2 h. After 10 mg/kg, MDMA areas under the curve (AUCs) were 21-fold (intraperitoneal), 10-fold (subcutaneous), and 36-fold (oral) greater than those at 2 mg/kg. In contrast, HMMA AUC values in high-dose groups were

<和訳文>

 ラットにおける(+または-)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンの薬物動態に対する投与量および投与経路の影響

 要旨

 動物データに基づいて、 (+または-)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)がヒトに対して神経毒性を有すると憶測されている。動物からヒトへとMDMAに関する所見を外挿するには、様々な動物種における薬物動態の評価が必要とされるが、ラットの低用量投与データが不足している。本研究では、ラットにおいて腹 腔内、皮下、経口経路で低用量(2mg/kg)および高用量(10mg/kg)で投与したMDMAのラセミ混合物の薬物動態を調べることとする。静脈カテーテルから血液検体を繰り返し採取し、ガスクロマトグラフィー質量分析により血漿に存在するMDMAとその代謝物、すなわち4-ヒドロキシ-3-メトキシメタンフェタミン(HMMA)および3,4-メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)をアッセイした。2mg/kgでの投与後では、腹腔内および皮下投与の場合、最大MDMA濃度(C(max))はおよそ200ng/mlであったが、経口投与の場合はそれより低かった。低用量投与群の場合、MDMAの血漿内半減期は1時間未満であったが、HMMAとMDAの半減期は2時間を超えた。10mg/kgでの投与後では、MDMAの曲線下面積(AUC)は、2mg/kgでの投与に比べて21倍(腹腔内)、10倍(皮下)、36倍(経口)であった。対照的に、高用量投与群のHMMA AUC値は、2mg/kg投与群の値に比べて3倍未満であった。
 本報告より、ラットで低用量MDMAを投与した場合の薬物動態に関して新しい幾つかの知見が浮かび上がる。まず、ラットで2mg/kgのMDMAを投与すると、ヒトの場合と同様なMDMA C(max)値が認められため、両種が実験室のパラダイムで1.5 mg/kg MDMAを区別する理由をおそらく説明している。第二に、我々のデータにより、ラットにおけるMDMAの非線形動力学(的挙動)がさらに支持され、ヒトに類似して、この現象が薬物代謝障害に関与するようである。最後に、ヒトとラットのMDMA薬物動態間の極めて重要な類似性を前提とした場合、もし適切な投与条件が採用されるのであれば、ラットのデータは臨床的に関連性がある可能性がある。

 翻訳者 帆足茂久(医学博士)