MAPS資料 舩田氏の薬物実験は量が多すぎる

INVESTIGATOR’S BROCHURE RELEASE DATE:August 1, 2013 Pharmacology in Animals


 この資料には、過去に行なわれたMDMAにおける毒性学的および行動学的研究は、元来軍事目的で人に相当する使用量を遥かに超える分量でなされていたことが記されています。舩田報告書(高木氏の裁判で問題となっているメチロンついての報告)も含め、従来の研究が根本的に間違っていたことを示す重要な科学的証拠です。

 高木氏の第一審判決文で述べられている「人とマウスで神経構造に類似点があるから」といったことは、まったくもって非科学的な説明というしかありません。薬物がどのような形で血液中に存在するのかという「薬物動態」の点において、動物と人とでは違いがあるためマウスの実験から推論することは困難であり、舩田報告のような過剰に投与された動物実験からは、人における薬物動態については決して調べることができないのです。

<MAPSとは?>

 Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)は、非営利研究・教育組織であり、サイケデリックス(幻覚剤)と大麻の合法処方せん医薬品としての開発に取り組んでいる。1986年、 Rick Doblin氏により設立され、現在はカリフォルニア州サンタクルス市に拠点を置いている。

 MAPSは科学者が管理薬物の安全性・有効性に関する多くの研究を計画し、資金を集め、規制当局の承認を得られるよう援助している。MAPSは後援する全ての研究実施計画が、臨床薬研究のための倫理および手順のガイドラインに適合することを保証するよう、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品審査庁(EMEA)といった世界中の政府系規制当局と連携して取り組んでいる。

 MAPSによる研究の取り組みの中には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を目的としたMDMA(エクスタシー)、人生終末期の問題に伴う不安、群発性頭痛、うつ病の治療が目的のLSDとシロシビン、アヘン剤中毒治療のイボガイン、吸入器や送水管など既存のものに代わる医療大麻の送達システムがある。

  MAPSの役員によると、団体の究極の目的は、上記のものをはじめとする治療が、公認の医師や治療専門家の指揮の下で他の治療と共に提供できる、診療所のネットワークを確立することである。
 MAPSは科学的研究を後援することに加えて、医学教育(CME)大会の継続した企画、サイケデリックスと医療大麻の研究事情に関する講義やセミナーの後援・開催、音楽祭やBurning Manなどの地域イベントへの参加、また進行中の研究、法的闘争、教育的企画に関する内容を更新した四半期速報の発行を行なっている。サイケデリックスとサイケデリック療法の歴史と文化に関する本も発行している。

 現在 MAPSが主眼を置いているのは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療を対象とした精神療法補助のため、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン (MDMA)を用いることの有効性の研究である。MDMA補助による精神療法は営利本位の薬剤企業がほとんど関心を持たない分野であるため、その臨床試験に資金助成しているのは世界中でMAPSのみである。最終的にMAPSは、MDMAの使用に対し処方薬としてFDAの承認を得ようとしている。
  2008年9月、MAPSはチャールストン(サウスカロライナ)で実施した、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療が対象の、MDMA補助による精神療法の有効性を検討した米国の予備的試験を完了した。本試験では、性的虐待、戦争、暴力犯罪をはじめとする外傷が原因の治療困難な治療抵抗性PTSDと確認された被験者20名のPTSD症状の緩和において、MDMA補助による精神療法が有効であるかどうかを検討した。
 MAPSは第2相予備試験を実施中であり、戦地からの帰還兵のPTSD治療を対象に、MDMA補助による精神療法の有効性を検討している。本試験はチャールストンで行なわれ、男女両方を含む戦争関連PTSDの帰還兵16名に対して実験的治療を実施している。
 MAPSは米国外では、カナダ、イスラエル、ヨルダン、スイスでMDMA/PTSD試験の実施を推し進めている。

http://en.wikipedia.org/wiki/Multidisciplinary_Association_for_Psychedelic_Studiesより一部引用和訳)

 ・・・・・

資料

(英文)
INVESTIGATOR’S BROCHURE RELEASE DATE: August 1, 2013
6.2.1. Pharmacology in Animals

Research into the pharmacological, physiological, or psychological effects of MDMA began in the 1950s, when the U.S. Army administered MDMA to guinea pigs, monkeys, mice, rats, and dogs as part of a military research program, possibly intended to develop chemical incapacitants or means of enhancing interrogation [82]. Investigations of the pharmacology, functional effects, and toxicity of MDMA in animals have generally included injections of large and often repeated doses of MDMA in an attempt to produce human-equivalent doses [83]. Recent reports re-examining these effects have questioned the applicability of interspecies scaling models for MDMA, and have supported nonlinear pharmacology [49, 84, 85]. A study directly comparing MDMA pharmacokinetics in humans and monkeys found that the two species metabolized MDMA in a similar but not identical manner and that MDMA had a shorter half-life in monkeys than in humans. Both species exhibited nonlinear pharmacokinetics, and it appears that monkeys and humans exhibit similar plasma MDMA levels after receiving the same dose of MDMA [86, 87]. An investigation in rats also demonstrated nonlinear pharmacokinetics in that species as well, finding that human-equivalent doses of MDMA in rats are close to or identical to those in humans and drug half-life is rapid [49]. Doses of 10 mg/kg but not 2 mg/kg produced signs of serotonin syndrome in rats, but neither dose reduced total serotonin levels in the brain two weeks after drug administration. These discoveries suggest that toxicological and behavioral studies of MDMA used doses exceeding human equivalent doses. As a consequence, it is difficult to interpret the relevance of findings in nonclinical studies employing these dosing regimes.

(和訳文)
 6.2.1. 動物での薬理学
 MDMAがも つ薬理学的、生理学的、心理学的効果を検討する研究は1950年代に始まり、その頃米国陸軍は、おそらく化学無能力化剤あるいは尋問を強化する方法の開発を目指した軍事研究プログラムの一環として、モルモット、サル、マウス、ラット、およびイヌにMDMAを投与する実験を実施した [82]。動物を対象としてMDMAの薬理学、機能的影響、及び毒性に関する調査研究を実施する場合、ヒトに相当する投与量を設定する試みとして、一般的にMDMAを大量投与し、さらに多くの場合、反復投与する [83]。これらの影響を再検討した最近の報告によれば、MDMAに対する種間スケーリングモデルの妥当性が疑問視され、非線形薬理学(※)の考え方が支持されている [49, 84, 85]。ヒトとサルで直接MDMAの薬物動態を比較した研究により、これら2種の霊長類ではMDMAの代謝は類似しているが同一ではなく、半減期はヒトに比べてサルで短いことが明らかとなった。両種ともに非線形性の薬物動態を示し、同量のMDMAを投与した場合、サルとヒトは類似した血漿MDMAレベルを示すようである [86, 87]。ラットでの調査研究でも、同種におけるMDMAの薬物動態も非線形であることが証明され、ラットで推定されるMDMAのヒト相当量はヒトでの値と非常に近いかあるいは同じであることが明らかにされた[49]。2mg/kg ではなく、10mg/kgの用量でMDMAをラットに投与するとセロトニン症候群の兆候が認められたが、いずれの投与量でも投与後2週間目の脳内総セロトニンレベルは減少しなかった。これらの発見により、従来のMDMAの毒性学的および行動学的研究では、ヒト相当量を超える投与量で実験を実施していたことが示唆された。結果として、これらの投薬レジメン(注:投与する薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画書)を用いて実施された非臨床試験で得られた結果の「妥当性」を解釈することは困難である。

 翻訳者 帆足茂久(医学博士)

※非線形:直線的な対応関係ではないこと。

上記出典 『MAPS INVESTIGATOR´S BROUCHURE』2013.08.01発行