EXPERT ADVISORY COMMITTEE ON DRUGS MEETING

ニュージーランド保健省のドラッグ諮問機関であるEXPERT ADVISORY COMMITTEE ON DRUGS(略称EACD) による2006年(平成18年)のメチロン等に関する会議議事録


作成者 EXPERT ADVISORY COMMITTEE ON DRUGS
(会議実施日 2006年3月30日)

 日本でメチロンの麻薬指定が決定された2006年(平成18年)当時、世界でメチロンを規制していたのはニュージーランド一国のみでした。ただし、 ニュージーランドのそれは麻薬としての規制ではなく、製造や販売は規制するが、個人所有には重罰を課さないC7クラスの管理であり、日本における(旧)「薬事法」の規制に近いものといえます。そのような決定を下すに至った合理的な理由が、本議事録には記されています。なおつけ加えるならば、2013年にはメチロンの個人所有の非犯罪化が決定しています。
 ニュージーランド保健省は、日本の厚生労働省と同様の組織であり、その諮問機関であるEXPERT ADVISORY COMMITTEE ON DRUGS(EACD)は、日本においては依存性薬物検討会が同種の組織となりますが、その規模や行政からの独立性、情報の透明性など、内実には文字通り天と地ほどの差があります。

 上記のように、ニュージランドではメチロンに関する議論が世界で最も早い時期に行われており、2006年(平成18年)の段階でEACDの勧告を受け、保健省が原案を定め、国会で審議してこの決定を行っています。
 高木裁判において、麻薬指定に際しては国会での審議が不可欠であると主張しているのは、世界の情勢から見ても妥当なのです。
 ニュージーランドの議事録では、委員の氏名も含め全てが公開されています。そして外国の一市民であっても、こうした議事の記録へ容易にアクセスすることができ、その全内容を検証することができるのです。
 これに対し日本の依存性薬物検討会は、政令改正と直接関わる内容を取り扱っているにも関わらず、議事録を作成せず、議事要旨も委員氏名も非公開で、誰のどんな意見に基づいて麻薬指定が決められたかすらわからないようになっています。
  本議事録に記されているように、EACDでは法律の専門家の意見を聞いた上で人に対する臨床試験の実施までが検討されています。それ以前の、十分な情報がない段階では軽い規制にし、科学的検証による証拠が明らかになった時点で適宜規制について新たに見直すことを勧めています。合理的であり、客観的かつ公正です。日本でメチロンを規制したプロセスと比較すると、情報の透明性や科学的視点など格段に優れていますが、そのようにして検証を重ねていった結果としての、 上記「メチロンの個人所有の非犯罪化」(2013年)なのですから、「日本は日本、海外は海外」といった排他的姿勢を措いて謙虚に耳を傾けるべきでしょう。
 海外における薬物規制のシステムを見習い、日本国憲法に照らして適正なプロセスを構築していくのは行政の義務です。その点からも本議事録は、日本におけるメチロンの麻薬指定のプロセスが適正なものであったのかを判断する重要な証拠と言えるでしょう。

※高木裁判では、本議事録を証拠として提出しましたが、却下されています。

 以下、議事録より抜粋(下部に日本語訳あり)

METHYLONE TRIALS

At the request of the Minister, the Ministry had requested a Crown Law Office opinion regarding the use of Methylone in trials on human subjects. Questions posed included whether Methylone is an illegal substance in any legislation and if such human trials are legal.
The key points in the Draft Crown Law Office opinion were presented.

While the final Crown Law Office opinion on the legality of the “trial” in question had not been received, members noted that no ethics committee approval had been obtained and that this is considered essential before any such trials are undertaken.
Dr Bedford outlined that ESR considers Methylone to be captured by the Class C7 controlled drug analogue provisions as it is an analogue of Cathinone, a Class B2 controlled drug.

Dr Bedford left the room.

A proposal was made that the Committee recommend Methylone to be specifically listed as a C7 Controlled Drug as it is an analogue of an existing controlled drug. This could be considered an appropriate level of classification at this time as Methylone may prove to be less harmful than Cathinone and other Class B drugs, as has been claimed. A C7 classification provides enforcement and sentencing powers and would still allow for its classification level to be increased, if indicated, as further information about its effects becomes available.

Discussion also occurred around the lack of current evidence to assess the harm of the compound and that an alternative approach would be to recommend a classification to match its parent compound (Cathinone) and schedule Methylone as a B2 controlled drug.

Dr Bedford was invited back in.

Dr Bedford felt that, given a lack of evidence about methylone, classification at the level of the parent compound (Cathinone) could be justified based on the assumption that it has similar effects until proven otherwise.

Agreed:
That the two possible approaches outlining the advantages and disadvantages of each be put to the Minister for his consideration.

<和訳文>
 メチロンの臨床試験

 大臣の要請により、保健省は人を対象とした臨床試験でのメチロンの使用に関し、クラウン法律部門の意見を求めた。提出された質問には、メチロンは法律上は違法物質とされるため人での臨床試験が合法であるかどうかの質問が含まれた。
 クラウン法律部門による意見のキーポイントが発表された。

 問題になっている「試験」の合法性に関しクラウン法律部門からの最終意見を受け取ることはできなかったが、メンバーは倫理委員会の承認が得られていなかったことを指摘。臨床試験が行なわれる前に、それは必須であると考えられると述べた。

 ベッドフォード博士は、メチロンはクラスB2規制医薬品であるカチノンの類似体であるため、ESR(環境科学研究所)はクラスC7規制医薬品類似体規定の適用を受けることが望ましいと考える、と説明した。

 ベッドフォード博士が部屋から退出。

 メチロンは既存の規制医薬品の類似体であるため、委員会は特にC7規制医薬品としての分類を推奨するという提議が行なわれた。メチロンは、カチノンや他のクラスBの薬よりも害が少ないと証明される可能性があるので、この時点で適切な分類レベルであると考えられる。C7の分類に、執行力と量刑力が備わり、必要に応じ、その効果についての情報がさらに得られれば、その分類レベルを上げることも可能となるだろう。

 現時点でこの化合物の害を評価するための証拠の不足に関して議論がなされ、また別のアプローチとしてその親化合物(カチノン)と釣り合わせ、メチロンをB2規制薬剤として分類することが推奨されるという議論もなされた。

 ベッドフォード博士が部屋に戻るよう案内された。

 ベッドフォード博士の見解は、メチロンに関する証拠の欠如を考慮し、親化合物(カチノン)と同様の効果を持っているとの仮定に基づき、そうでないことが証明されるまで、親化合物のレベルでの分類が正当化されるのでは、というものであった。

 合意点:
 それぞれの長所と短所を概説する二つの可能な取扱い方法が大臣に提出され、検討されること。

 翻訳者 帆足茂久(医学博士)

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上記出典
「EXPERT ADVISORY COMMITTEE ON DRUGS MEETING」議事録(全文)
http://www.moh.govt.nz/moh.nsf/pagescm/565/$File/eacdminutes300306.pdf