最高裁への要請書(桜井昌司さん)


 本えん罪事件を支援してくださっている桜井昌司さん(布川事件えん罪被害者。無実の罪で29年間の獄中生活を余儀なくされたが、有罪確定から44年後、再審により無罪を勝ち取る。現在は、日本全国のえん罪被害者支援活動に従事)が、高木一行先生の裁判のために書いてくださった、最高裁判所への要請書をご紹介します。


 要請書

 最高裁判所第一小廷 御中
 平成28年2月1日
 桜井昌司

 貴法廷に係属します高木一行氏に関わる「麻薬取締法等違反事件」(平成27年、あ、第1840号)について、ぜひとも証拠に基づく公正な審理をして頂きたく、この要請書を提出させていただきます。
 私、桜井昌司は、布川事件と呼ばれます冤罪事件を体験しました。そして、多くの冤罪事件を知る中で、ひとたび事件の狙いをつけて逮捕した警察は、自分たちの見立てに沿った捜査や取調べをするだけで公平、公正に被疑者とされた者の訴えを聞かない組織であることを知りました。それは検察も同じです。警察の後を追って捜査することになる検察は警察の見立てに引きずられてしまい、被疑者の声を聞けません。怪しげな証拠と偏った判断によって、警察と検察は冤罪を作り上げてしまうことが多いと、多くの冤罪事件は訴えています。
 私の体験した布川事件、菅家利和さんが体験した足利事件、ゴビンダ・プラサドマイナリさんが体験した東京電力女子社員殺人事件をはじめ、志布志選挙違反事件や氷見・強姦事件などでも同じように誤りが重ねられました。
 これらの事件について、真摯な検証と反省を行わない警察と検察は、今も多くの事件で同じように誤った捜査を重ねてしまい、冤罪に苦しむ人を作り出しています。
 その一つが高木一行さんの犯罪として罪を問われます麻薬取締法等違反事件です。
 この事件の冤罪性につきましては、ご本人からの申し立て、及び弁護人からの上告申立書が提出されましょうし、私から事実関係についての見解を申し上げることはありませんが、これまでに高木さんが弁明してきた事実を検討し、裁判で検討された証拠なるものを見ますと、そこに犯罪の怪しさを感じる警察と検察の感覚は理解できますし、起訴したことも誤りではないと思いますが、総ての起訴事実を有罪とした裁判所の判断は誤っていると思います。
「そこは怪しげな健康法を行う集団、捜索して提出を受ければ大麻などの薬物が複数、禁止薬物を使う薬物集団、その主宰者」と進んで行けば、これが事件として起訴されて裁判になるのは自然だったかもしれません。「常に犯罪者と対峙していて捜査対象者を疑惑の眼でしか見られない」警察が、より重大な犯罪を探して捜査を行うことも判ります。しかし、そのような偏った眼で、この事件で重大な問題点になる、高木さんが海外のウエッブ・ショップで簡単に購入できた「メチロン」などが、日本で禁止薬物に指定されていたことを知っていたか、知らなかったかという点を、一方的で偏った見方をしたところに、この冤罪性があると思います。
 もちろん、知らずに使ったとしても法律に反することには変わらないですが、罪の責任は違います。
 私が高木さんの弁明を読んで感じる一番のことは、高木さんは言い逃れしていないということです。禁止薬物を所持していたことなどの非は認め、その上に事実だとして列挙する経過などが理性的で合理的な論述であることです。そこに信用性があると思えることです。犯罪者が行いがちな奇天烈な弁明とは違うという点です。
 この事件で共犯とされた人は受刑を終えて社会に帰っていますが、高木さんの有罪証拠として列挙された「共犯者自白」なるものは、どこに存在するのでしょうか。ここに重大な過ちはないでしょうか。
 有害性などの議論はあるにしても、禁止薬物を所持していた以上、有罪判断は当然かもしれませんが、禁止薬物との周知が十分になされないまま、それと知らずに海外から購入したことは罪になるのでしょうか。ここを有罪とする判断に過ちはないでしょうか。
 布川事件などとは違った冤罪事件と言える高木さんの冤罪ですが、一人の人間が人生を奪われますことは同じです。その苦しさにも変わりはありません。
 どうぞ最高裁判所に於かれましては、高木一行さんのこれまでの弁明にある事実を公正に、公平にご判断いただけますように、心からお願いいたします。

以上