刑務所より愛を込めて No.7


文/高木一行
〜2016年6月13日〜


愛する美佳

 6月10日朝、「出る準備をして」という声がついに私にもかかり、いよいよ次のステージへ進む時が来たか、サァ勇躍、いかなる地へもおもむかん・・・と思いきや、人数調整のためよその部屋へ移されただけだった。
 広島拘置所へ来てから8人の人たちと同室になったが、相手が若かろうと高齢者であろうと、詐欺師でもヤクザでも、誰とでもすぐに打ち解けて仲良くなる。刑務所(拘置所)というのは確かに、人間という存在について深く学べる特異な場所だ。私はそれを十全に満喫し、徹底的に楽しみつつある。

 いわゆる「罪人(つみびと)」たちとハートを開いて話し合っていると、君が先日手紙で書き送ってきた、出所者のサポート役をつとめる保護師が語ったという内容が思い出されてくる。
 いわく、「刑務所に入る者といえど、普通の人間と変わらない」、「そういう人たちに対するやさしさが大切である」、「差別意識があったらこの仕事はできない」、「世の中の人々がみなやさしさを持てば、犯罪そのものがこの世からなくなるのではないか」・・・御立派と言いたいところだが、遺憾ながらその人はものごとの本質を完全にとらえ損なっている。
 普通の人と同じと言いつつ、自分は罪を犯さない、自分は違うという、傲慢なエゴのささやきに当人自身、まったく気づいてない。
 その保護師を含むすべての人間の内面に、ありとあらゆる罪の種子を孕(はら)み含む暗闇が潜むという事実にこそ、保護師たる者、是非気づいていただきたいものだ。

 ここへ来てから約1ヶ月半が過ぎた。相も変わらずいつ、どこへ移送されるやもしれぬ不安定な状況ではあるが、過去へも未来へも想いを一切馳せることなく、ただ、今、この時を全身全霊で生き切ることのみを心がけつつ、修業に打ち込む毎日を送っている。
 龍宮道の新しい密珠とか、螺旋ルートに基づき腰腹同量の中心力を螺旋状に造る原理など、新しいわざが次から次へに啓発されるが、今はまだ、自らの裡に刻み込むことしかできない。

 いつか、然るべき時が来たならば、それらをまとめて整理し、平易に解き明かすこともあるだろう。あるいは、誰一人知ることなく、大いなる宇宙の流れの中に失われてしまうのか。
 ・・・・我知らず、我関せず。

2016.06.13       
愛を込めて
一行