麻薬指定の問題点①

メチロン麻薬指定における実体面の問題点

 メチロンは平成18年度の依存性薬物検討会において麻薬相当と結論され、麻薬に指定されました。同検討会の議事録は作成されておらず、議事要旨等、その他の資料もほぼすべて非公開となっています。

 しかし、高木先生の裁判において、裁判所の問い合わせに対し、厚生労働省医薬食品局麻薬対策課は、麻薬指定の根拠として、舩田正彦氏(国立精神・神経センター所属)の研究報告、「脱法ドラッグの構造修飾特性とその依存性および神経毒性発現の関連性」を示しました。ところが、支援者グループがこの報告書を検証したところ、とても科学的とは言えない内容であることが判明しています。特に、この分野で世界でもトップのノウハウを持っているMAPS(アメリカやイスラエルで政府の許可を取って、MDMA等の物質の医療研究等を行っている団体)に舩田報告を検証してもらったところ、一言目から「very very high doses(実験で投与されている薬物の量が多すぎる)」と酷評されるほど低レベルのものでした。

 結論としては、舩田報告は、メチロンの人への影響を調べるための実験というよりも、あり得ないほど過剰な量のメチロンを投与して異常な結果を無理やり出し、メチロンが麻薬だとこじつけるための内容であるとしか考えらません。

 以下、少し詳しく問題点を説明します。

①中枢興奮作用の実験でマウスに投与されたメチロンの量が過大である。

 実験においては、通常使用する量を基準として投与していくのが当然です。ところが、舩田報告においては、人に換算すると、投与された者の半数が死に至るほどの異常な高濃度のメチロンを繰り返しマウスに投与し、興奮した、と結論付けています。少し考えればわかりますが、塩だろうとアルコールだろうと、摂りすぎれば死に至ります。そのような過大に投与した結果を以て中枢興奮作用あり、とするのは人における作用を研究する実験においては不適当です。

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②依存性の実験方法に誤りがある。

 舩田報告ではCPP法という実験方法を以て、依存性を評価していますが、一般にCPP法では依存性を評価することはできません。CPP法でわかるのは嗜好性(好き/嫌い)です。事実、CPP法で麻薬相当の依存性がわかるのなら、市販されているお菓子も麻薬指定しなくてはならなくなります。CPP法で麻薬と同じ結果が出るからです。また、仮にCPP法で依存性がわかるとしても、実験結果ではMDMA相当の依存性ということになっています。  MDMAは日本で麻薬に指定されているし、きっと高い依存性なのだろう、と多くの方は想像してしまうかもしれませんが、実際は、アルコールやニコチンよりもずっと低いことが科学的に明らかになっており、その程度の依存性を問題とすることには大変な無理があります。実際に西洋諸国では、MDMAを麻薬のカテゴリーから外し、より緩やかな規制対象とする動きが起こっています。

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③細胞毒性の実験でマウスに投与されたメチロンの量が過大である。

 実験に投与されたメチロンの量が圧倒的に過大であり、適正と思われる量の500倍~1000倍の量を用いて、毒性あり、と結論しています。中枢興奮作用の実験でも同じでしたが、塩でもアルコールでも摂りすぎると死に至ります。過剰に投与すれば異常が出るのは当たり前です。この実験は通常使用量で毒性があるかどうかを調べたものではなく、どのくらい投与すれば異常になるかを明らかにしたものだというべきもので、この結論を以て、毒性がある、とするのは本末転倒です。

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④メチロンを誤ってフェネチルアミン類として実験している。

 舩田報告ではメチロンをフェネチルアミン類(化学的特性によるカテゴリーわけの一種)と前提して実験し、MDMA(フェネチルアミン類)に類似した物質であり、麻薬相当だ、としています。しかし、メチロンはカチノン類(化学的特性によるカテゴリーわけの一種)であり、舩田報告の実験の前提がそもそも間違っています。MAPSの創設者ドブリン博士とMAPS研究者ジェローム博士による意見書でも、この実験データからメチロンの効果を推測することは無理であると指摘されていますし、2006年にニュージーランドで同物質について検討されたEACDの議事録でもメチロンはカチノン類とされています。その同じ年(平成18年)に舩田氏が報告書を作成し、それに基づき厚生労働省がメチロンの麻薬指定を決めた時点で、メチロンはフェネチルアミン類ではなくカチノン類であるとの認識が世界的なスタンダードであったことは明らかです。

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